脊椎動物の胃腸管で作られるグレリンは、多彩な生理作用を根拠に心不全などの疾患治療に使える可能性が示唆されています。これらの検討は全て合成品によるもので、注射によるものです。ですから日常的な利用には天然物を経口摂取する方法が受け入れられやすいと考えられます。しかし天然グレリンを確保する手段が確立されていないため、グレリンの経口摂取効果は今のところ不明です。
グレリンは魚類の胃にも存在し、生理作用を表す活性部位の構造はヒトと魚類でほぼ同じです。つまり、魚類胃由来のグレリンがヒトの体内でも効果を表す可能性があるわけです。
魚類の胃は加工時に廃棄処分されていることから、天然グレリンの供給源として量的に優れていると考えて良いでしょう。
そこでわれわれの研究グループが、サケ加工場から得た胃からグレリン抽出物を作成し、心不全を誘発したマウスに給餌したところ、死亡が減り、心不全症状(腹水貯留、心筋障害マーカー、心電図波形など)が改善されることをはじめて明らかにしました。
水産廃棄物中の天然グレリン摂取によるQOLの改善が期待できる結果です。
そしてこれも捨てられる内臓の有効利用です。
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